金は良い召使いでもあるが、悪い主人でもある。
ベンジャミン・フランクリン
現代社会で人生を生き抜くにはお金は切っても切り離せない存在。
しかし、必要なだけでお金はある程度を超えると、人生の幸せには影響しなくなってきます。
お金が稼げるようになると、欲しかったものが手に入るようになります。しかし、いくら欲しかったものを手に入れ続けても、僕らは満たされない生き物なのです。
所得と幸せ
誰もが高所得な仕事を望むでしょう。どうせ働くなら誰でもお金は欲しいものです。収入の多さで仕事を選びたくなるのは自然なことでしょう。
しかし、収入の多さと人生の幸せにはほとんど関係がないと言う研究があります。
年収800万が幸福度のピーク
年収と幸福度の相関で有名なのは「年収が800万を超えてくると、いくら稼いでも幸福度は変わらなくなる」と言う、ノーベル賞を受賞したダニエル・カーネマンの研究結果です。
この研究結果は世界中どこでも見られる現象で、アメリカだろうが日本だろうが幸福になれる収入の上限は変わりません。
いや、自分は年収800万も望んじゃないない!と思った人に残念なお知らせです。
この年収800万という数字は、あくまで“上限”であって、現実には、もっと手前から幸福度の上昇は鈍くなってしまいます。
例えば、令和元年に内閣府が発表した「満足度・生活の質に関する調査」では、1万人を対象として世帯収入と主観的な満足度の変化を比べたところ、
年収300万円〜500万円を過ぎたあたりから、急に満足度が上がりにくくなります。
また、日本を含む、世界140カ国の収入と幸福度の相関を計算した研究では、年収が400万円〜430万円を超えた場合、そこからさらに幸福度を5%高めるには追加で、年に400万円〜430万円必要になる。
つまり、もし年収400万円の人の年収が倍になっても、幸福度はほんのちょっとしか上がらない可能性があります。
宝くじ
お金が増え続けると満たされないなんてありえない。大金が手に入れば人生は変えられるはずだ!と言う方もいるかもしれません。
例えば、宝くじの列に並ぶ人とか。
しかし、宝くじ当たった人の末路を見るとろくな事がないようです。
その日から読む本
もしも、宝くじに当選すると、当選金が払い戻される際に、銀行から高額当選者に「その日から読む本」と言う冊子が渡されるそうです。
その中には、「当選した興奮と付き合い、落ち着いたらローンなどの返済を優先する事」などと夢もなければ余計なお世話な事が書かれています。
しかし、そんな冊子が配られると言うことは、高額当選者のなかにそう言う人たちが多かったのでしょう。
実際に、一度に大金を手にしたことに舞い上がってしまって、家庭内トラブルを起こしたり、胡散臭い投資に騙される。などの悲劇で身を滅ぼす人が一定数いるようです。
特に、家庭・親族内トラブルがポピュラーで、宝くじに当選すれば、家族はもちろん、親戚、しかも今まで縁遠かった親戚までが、直接か間接的におこぼれを要求してきて、家庭内がお金の話ばかりになってしまったりして、運が悪ければ「一家離散」を引き起こしかねないきっかけとなります。
忘れられない生活
また、世間は「急に資産を築いた人」の財布を開くためにマーケティングを研究し尽くしているので、大金を扱うことに不慣れな人の金銭感覚を麻痺させて、様々な商品を買わせようと虎視淡々と近づいてきます。
さらには、「急な裕福化」はかえって貧困を招くこともあります。
例えば、米プロバスケットボールNBAを引退した人の60%は今までの裕福な生活が板につき、5年以内に破産していると言うデータもあります。
何故なら、今まで裕福な買い物をしていた人たちは、お店にとって良いお客様なので、来店すればVIP待遇で迎えられ、一度味わったら忘れられない“あなただけ感”に酔ってしまいます。
結果、そんな忘れられない高待遇な生活を続けて破産に陥ってしまうようです。
買い物と幸せ
中には、お金があれば欲しいものがたくさん買える!という、買い物で気持ちが満たされる人がいると思います。そんな人は、買い物で寂しさを紛らわせている事が多いのですが…
実際、生活の中での贅沢が大好きだったり、実用的でない物を楽しむ性格の人、つまり、どうでも良いものにお金を使うことで楽しみを得ている人は、物や消費で寂しさが軽減されることもあります。
しかし、そんな性格でない人は買い物によって負のサイクルに陥っています。
ブランドに身を包む
人生に満たされていない人、例えば、仕事や人間関係で満足していない人は、その満たされない寂しさを買い物で満たそうとします。
特に、自分を幸せそうに見せそうな持ち物に目を向ける事が多いいのです。
例えば、露骨なハイブランドばかり身に付けるような人はその可能性があります。
露骨なハイブランドとは、わかりやすいステータスシンボルになります。
高級バッグなど憧れのブランドに身を包めば、周りからはそれなりのステータスを持っている人、と憧れを含んだ目で見てもらえると期待するのです。
しかし、世の中そんなに甘くはないのが世の常。ハイブランドのバッグを身に付けるだけで人生が変わって、寂しさが埋まるはずがありません。
期待して買ったハイブランドは肩透かしで無残にも終わります。
しかし、思考は明後日の方に走り、もっと別の物を手に入れれば、身につければ寂しさが埋まるかもしれない!と、また別の期待をしてしまいます。
そうやって、ずるずると、自分を幸せそうに見せそうな持ち物ばかりに散財するという負のサイクルに陥ってしまうのです。
物よりも経験を買う
お金を稼いでも幸せになれないし、大金が手に入ってもかえって不幸になる、挙げ句の果てには欲しい物を手に入れても幸せになれない。
と、ここまで夢も希望もない話をコンコンとして行きましたが、それらを否定しているわけではもちろんありません。
年収がモチベーションになることもありますし、宝くじを当てたい気持ちもわかります。ブランド物の商品に憧れることもあります。
だから、それらをやめなさい。という話ではなく、幸福をそれらに求めてるのは割りに合わない。という話です。
メルローを待ちながら
最後にここで話しておきたいことは、幸せや喜びを求めた買い物をするのであれば、物ではなく経験にお金を使う事が最も良い。という話です。
経験はすぐに過ぎ去ってしまうから、形として残る物にお金を払った方が良いように見えますが、実は、物を買って得れる幸せは急速に萎んでいってしまうのです。
一方、経験がもたらす喜びは、それが実際に起こるずっと前から始まるということを示す調査結果もあります。
また、コーネル大学の心理学チームによる『メルローを待ちながら』という洒落た名前の調査結果によると、
期待がもたらす喜びは、経験を心待ちにしているグループの方が大きかった。
一方、物の購入を前もって検討している人は、そのために幸せだとは感じていない。
という結果が出ました。
とは言っても、物にお金を使ってもそれが結果として経験に結びつくのならば幸せや喜びにつながります。
車を買って仲間やパートナーとこれまでいった事のない場所へ訪れると言った、物ありきの素晴らしい経験だってあります。
僕は去年、渋谷のアップルストアまで行き、古いiPhone6から最新のiPhone11proを発売日当日に手に入れました。
5年ぶりに買い換えたので、様々な機能が新しくなってテンションが上がっていましたが、その日の夜にはもうどうでも良くなっていつも通りの生活になりました。あまり携帯に依存しない生活を心がけていたので、最新のiPhoneも所詮そんな物だったのです。
しかし、その翌週に、友人たちとディズニーシーに行き、その時、全て僕のiPhoneで写真を撮りました。
最新のiPhoneといえば三つ目のカメラでさらに良い写真が取れるという事で面白がって様々な写真や動画をバッテリーが赤くなるまで撮り続けましたのです。
結果としてたくさんの思い出たちが、所詮そんな物だったiPhoneに残されています。
そして思ったのです。この新しいiPhoneがこの素晴らしい思い出たちを残してくれたのかもしれない。と
所詮、物は物でしかない。人生を彩るのは様々な経験。しかし、その経験を物さらに華やかに、もしくはロマンチックにしてくれるでしょう。
そして、お金はそのための手段です。お金と上手に付き合う事ができれば、僕らはお金を幸せに買える事がきっとできるでしょう。
参考書籍

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