books

その不調、睡眠不足が原因かも

睡眠は極めて複雑で、とても興味深い機能だ。私たちが思っている以上に、健康に重大な影響を与えている。睡眠の役割は決して一つではない。
むしろ、脳と体の両方にたくさんの恩恵をもたらしている。身体の臓器であっても、脳の機能であっても、全てが睡眠によって最適化されているのだ。

睡眠こそ最強の解決策である/マシュー・ウォーカー P13,14(第1章 「眠り」という謎)

なんだか頭がぼんやりして集中できない…
最近物忘れが激しい…
感情的になる事が多くなってきた…
なんだか太ってきた気がする…

その不調の原因、全て睡眠不足が原因かもしれません。
僕らの体のよくわからない不調の大元は脳の調子が良くないケースが多いです。
身体中の隅々まで指令を送る脳の調子が悪くなると、その指令が出なかったり出過ぎたり、出続けたりします。
その少なすぎたり多すぎる指令のせいで、結果的に僕らの調子が悪くなってしまします。
そんな脳の不調を整える万能薬。それが睡眠です。

そして、そんな睡眠という万能薬が、最強の解決策だ!と謳った本。
「睡眠こそが最強の解決策である」が、今まで読んできた睡眠系の本で一番内容が網羅されていて、睡眠の謎をこれでもかと紐解いてくれる最も睡眠を理解できる一冊から、睡眠と不調の関係を紹介したいと思います。

睡眠と慢性不調

今のところはっきりしているのは、睡眠こそが万能薬だという事だ。
体の不調も、精神の不調も、必要なのは睡眠という薬だ。

睡眠こそ最強の解決策である/マシュー・ウォーカー P131(第6章 記憶力と睡眠)

睡眠と集中力

睡眠不足の悪影響を真っ先に受けるのが、「集中力」です。
僕らは睡眠不足が嵩むと「マイクロスリープ」という、集中力が一瞬だけ途切れる現象が度々起きます。この現象が僕らの集中力を無意識に奪っています
マイクロスリープを発見した研究者は、この現象を説明するとに、心電図の例を使います。

ピッピッピっピーーーーーーー

心電図といえば、スクリーンに表示させれたギザギザの線で心臓をモニタリングしていますよね。
ギザギザの線が続いているということは、心臓が平常に機能していますが、心臓が止まると、そのギザギザの線はビープ音を鳴らしながら一直線を描きます。
この、一直線の状態がマイクロスリープです。
そして、しばらくすると僕らは意識を取り戻し、ギザギザの線を描きますが、またしばらくするとマイクロスリープがやってきて、一直線の線を描きます。
この現象を睡眠不足は度々引き起こします。

このマイクロスリープには2つの不都合な事実があります。

  • マイクロスリープは無意識に起きているので気づけない
  • マイクロスリープは日常的に睡眠時間が7時間に満たない人に頻発する

もしあなたが、6時間前後の睡眠を日常的にしているのであれば、度々マイクロスリープを起こしています。

睡眠不足は飲酒状態

ちなみに、マイクロスリープが引き起こすパフォーマンスの低下は、
6時間睡眠を10日間続けていると、24時間丸々起きていた人と同じレベルのパフォーマンスになります。

さらにさらに、19時間通して起きている人の脳の状態は、法律で取り締まられるレベルの飲酒と同じ脳の状態なのです。

睡眠と記憶

睡眠が僕らの日中の記憶を整理して、短期記憶を長期記憶にしている、と聞いた事がある人はいくらいかいると思います。
しかし、睡眠の全てがその役割を担っているわけではないのです。

ご存知の方が多いと思いますが、睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があります。浅い睡眠と深い睡眠なんて言われてたりしますね。
この二つの睡眠のうち、ノンレム睡眠が僕らの脳に記憶を焼き付けてくれています。
つまり、睡眠時のノンレム睡眠が多ければ記憶の定着がよくなり、少なければ、記憶の定着率が低下します。
そして、このノンレム睡眠は簡単に奪われてしまいます。
例えば、日中の多すぎるカフェイン、寝る前のアルコール、ベッドに入ってからのだらだらスマホ…。
ちゃんと寝たと思っていても、これらのせいで、ノンレム睡眠の少ない睡眠が続けば、僕らの脳の記憶力はずるずると低下していってしまいます。

睡眠と感情

睡眠不足によるイライラは多くの人が経験の自覚をしていると思います。
このイライラの原因は、眠いからイライラするのではなく、睡眠不足によって、脳の機能が正常に働かないからなのです。

敏感なアクセル、効かないブレーキ

僕らの脳には、危機を察知して闘うか逃げるかを即座に判断する本能的な機能が備わっていて、その脳の部分を「扁桃体」と呼びます。
この扁桃体がなんらかのストレスの要因を察知する事で本能的な感情や行動が起きます。しかし、僕ら人類は、それらを抑制する「前頭前皮質」という理性や自制心を司る部分が発達しているので、普段であれば、突然カッとなって乱痴気騒ぎを起こさずに済んでいます。
つまり、扁桃体は感情のアクセルで、前頭前皮質はブレーキの役割を担っています。

ところが、睡眠不足になってしまうと、この脳機能に異変が生じます。
ストレスを察知する「扁桃体」は普段よりも敏感になり、理性や自制心を司る「前頭前皮質」の機能は低下してしまいます。そうなると、脳の状態は、感情のアクセルが全開で、ブレーキは劣化して効きが悪い状態です。
結果、ブレーキが効かないせいで感情が爆発してしまうのです。

この感情のアクセルとブレーキの関係はネガティブな気持ちだけではなくポジティブな気持ちにも悪影響を与えます。
感情のアクセルである扁桃体は、ネガティブな過剰反応だけではなくポジティブな過剰反応も起こします。
そして、これも感情のブレーキがうまく効かずに、いきなりポジティブな状態へ感情がコロコロと変わってしまします。

つまり僕らが睡眠不足に陥ると、感情のアクセルは過剰反応し、感情のブレーキは効きが悪くなり、イライラと気分の良い状態を激しくいったりきたりしてしますのです。
身近にいませんか?さっきまでニコニコしてたと思ったら、いつの間にか怒鳴り散らしてる感情の行き来が激しい人…。

睡眠と食欲

困ったことに睡眠が足りないと脳機能だけではなく体の代謝機能まで低下してしまいます。
睡眠時間が7時間から8時間の十分な睡眠を取らないと、食欲が増え、代謝が衰えてしまい、結果的に体重がどんどん増えていってしまい、いずれは、肥満や糖尿病に発展してしまいます。

満腹と空腹の均衡が崩壊する

なぜ睡眠不足が肥満や糖尿病へつながるリスクがあるかというと、睡眠時間が短くなると、食欲をコントロールする2つのホルモンが正常に働いてくれません。

睡眠時間が短くなると、血中の満腹感を促すホルモンの分泌が減って、食欲を刺激するホルモンの分泌量が増えてしまい、空腹と満腹のバランスが崩れ、食欲が大幅に増えてしまいます。
具体的に実験では、4、5時間睡眠になったときにこの食欲の増大が確認されました。

とは言っても、食欲が増大しただけで実際に食べる量が増えるかどうかはわからないじゃないか。と思う方もいるかもしれませんが、それについても実験で明らかになっています。

実験では、参加者を2つのグループに分け、8時間半睡眠を4日間、4時間半睡眠4日間続けてもらいます。
この時の実験中の活動は2つのグループに差が出ないように厳格に管理されました。
そして、食事に関しては、好きなだけ食べてもらって、その食事内容は記録され、カロリーを計算する。という実験デザインです。

1年間で7万キロカロリー

結果として、睡眠時間が短いグループは8時間半睡眠に比べ300キロカロリー多く食事で摂っていて、5日間の合計では1000キロカロリー以上のぞうか担っていました。
さらに、5時間から6時間睡眠を10日間続けた場合、4時間半睡眠を4日間続けた場合と同じ摂取カロリーになってしまうようです。

社会人の多くはこのくらいの睡眠時間だと思います。
もし、平日にこのくらいの睡眠時間を1年間続けていると、単純計算で役7万キロカロリーも多く摂っていて、体重増加量に換算すると大体4.5〜6.8キロの増加に値します。
社会人になって去年よりこのくらい体重が増えていたら睡眠不足の可能性を疑ってみましょう。

慢性睡眠不足と糖尿病

さて、睡眠不足は肥満を引き起こすだけでは飽き足らず、糖尿病リスクまで引き起こします。
特に、慢性的に睡眠時間が6時間以下の人は、2型糖尿病を発症する確率が遥かに高くなります。
これは、体重、アルコール摂取量、喫煙の有無、年齢、性別、人種、カフェインの摂取量など糖尿病と関わりの深い要因を調整しても結果は変わらなかったのです。

なぜ睡眠不足が糖尿病に影響するのでしょうか?これもまた、体内のシステムが言うことを効かなくなってしまうことに原因あります。

睡眠時間が短くなると、体内で糖質をコントロールするインスリンに細胞が反応しなくなってしまうのです。
僕らの体はエネルギーである糖分(グルコース)を吸収して動いています。しかし、睡眠不足になってしまうと、体の細胞がこの糖分を吸収しなくなります。
そうなってしまうと、血中の当分の量が高い状態、つまり高血糖の状態になってしまいます。

だから、慢性的な睡眠不足は慢性的な高血糖に繋がり、糖尿病を引き起こすリスクを高めてしますのです。

人間は睡眠で進化した

人間の脳も体も睡眠で進化してきました。
人類が飛び抜けた知性を持っているのも、木の上で短い睡眠を重ねる生活から、床で長い睡眠をとる生活になったからではないかと言われています。
寝る子は育つのです。寝ることで進化でき、成長するのです。
新生児が寝てばっかりいるのも脳を作り上げているのが理由です。
そして、睡眠と体の不調の関係を見て分かったように、僕らは睡眠を通して体を健康な状態に整えています。

しかし、睡眠時間が短くなってしまったことで、体をメンテナンスするシステムが隅々まで行き届かなくなってしましました。
その結果、僕らは体のどこかしらに不調を抱えたまま日常を生きるようになってしまいました。

全ての病が睡眠で治るとは言い切れませんが、全ての病の発端はその睡眠不足の可能性があります。
誰もが短い睡眠では本調子で生きていけません。中には、自分はショートスリーパーだと思っている方もいるかもしれませんが、それはただの思い込みです。
ショートスリーパーは遺伝子の突然変異と言われていて、自分がショートスリーパーである確率は12000分の1です。どのくらいの確率かと言うと、雷に打たれるくらいの確率です。
そんな低い確率に賭けて、短眠を続けるよりも、しっかり睡眠を摂って、体の調子を整える方が、仕事にも普段の生活にも大きな恩恵をもたらしてくれます。

そう言うわけで皆さん、今日はさっさと寝ましょう。

関連記事

  1. books

    今週の読書-また同じ夢を見ていた、透明な君の後悔を見抜けない、明るい夜に出かけて

    気づけば今年も4分の1しか残ってないですね。ついこの前、令和元年を迎…

  2. books

    今週の読書-χの悲劇、悲観する力

    今週は森博嗣ウィークでした。いつも言っていることですが、森博嗣作品は…

  3. books

    「人生は20代で決まる」を再読して—残りの人生を有利にする重要な時期

    2、3年くらい前に一度読んで衝撃を受けたのですが、今になって再読する…

  4. books

    今週の読書-旅のラゴス、恋と禁忌の述語論理、料理の化学①、THE RHETORIC、日本進化論

    いつの間にか2月ですね。信じられません。そもそも、僕は2019年を迎…

  5. books

    今週の読書-それでもデミアンは一人なのか?、世にも奇妙な君物語、超図解・宗教

    ライフサイクルが変わると、今までの当たり前だった習慣も変わってしまう…

  6. books

    甦る殺人鬼、キャサリンはどのように子供を産んだのか、7つの習慣

    新型ウィルスの蔓延のおかげで世界が鈍化している中で皆様いかがお過ごし…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

最近の記事

カテゴリー

  1. books

    今週の読書-ままならないから私とあなた、突破力、バレットジャーナル
  2. Think

    テクノロジーに首を切られるのは人間だけじゃないらしい。
  3. books

    重版未来 表現の自由はなぜ失われたのか、森籠りの日々、それ、なんで流行っているの…
  4. Think

    if-thenプランニング始めました。
  5. books

    人生の教養が身につく名言集、果糖中毒、人生は20代で決まる
PAGE TOP