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アイデアを閃く5つのステップ

さて、では人間に要求される能力とは何か?
それは、新しい問題を見つけること、これまでになかったアイデアを発想することである。これは、「計算しなさい」というような問題ではないから、コンピュータにさせることができない。機会ができるのは、あらかじめ決まった箇所をチェックし、過去と同じような不具合が生じてないか調べ、定められた対処をすることだ。

アンチ整理術/森博嗣 P63(第2章 環境が作業性に与える影響)

たくさんのことを覚えているよりも、複雑な計算ができることよりも、今必要とされていること、さらにはこの先求められることは、クリエイティビティ。
つまり、創造性でしょう。
創造性は、この世界にないものを生み出すようなイノベーションだったり、目前に立ちはだかる問題の解決方法だったりします。
そんな、様々なアイデアの生産性を、誰でも高めるようなアイデアの作り方があるのです。

アイデアを生産する5ステップ

アイデアの作成はフォード車の製造と同じように一定の明確な過程であるということ、アイデアの製造過程も一つの流れ作業であること、その作成にあたって私たちの心理は、習得したり制御したりできる操作技術によって働くもであること、そして、何であれ道具を効果的に使う場合と同じように、この技術を修練することがこれを有効に使いこなす秘訣である、ということである。

アイデアの作り方/ジェームズ・ウェブ・ヤング P18

アイデアの生産するには5つのステップがあります。
そのステップをざっくり並べると、

  1. 情報を集める
  2. 情報を咀嚼する
  3. 情報の組み合わせを試行錯誤する
  4. 無意識に任せて閃く
  5. 閃きをブラッシュアップして仕上げる

という5つのステップから構成されています。
では、一つ一つ見ていきましょう。

1.情報を集める

まずはテーマ、課題に対する情報をとにかく集めます。何はともあれ情報収集です。
とにかく集めれるだけ集めるのです。
ここのとき、集める情報には2種類あります。それが「特殊情報」と「一般情報」です。
この二つの違いは何かというと、
「特殊情報」は、テーマ、課題に直接関係する情報資料です。そして、
「一般情報」は、テーマ、課題に関係のない、日常生活や全く関係のない領域の知識などです。

ジェームズ・ウェブ・ヤング

どうして「特殊情報」と「一般情報」と明確に分けているかというと、元々このアイデアの生産方法を体系化した人が、ジェームズ・ウェブ・ヤングというアメリカの広告代理店の人だったからです。
だから、売り出したい商品を、僕ら消費者の日常生活に結び付けて広告宣伝を打ち出すための方法が根底にあるのです。

広告代理店のアイデアをうむ方法と聞くと、役に立たないのではないか?と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
よく見るイノベーションは、新しいテクノロジーを僕らの身近な生活に結び付けています。
例えば、今となっては当たり前のように僕らは音楽を持ち歩いていますが、ちょっと前、ソニーがウォークマンを作り出すまではそんな習慣はなく、音楽は室内で聞くものでした。
しかし、ウォークマンを作り出し他ことによって、僕らの生活に常に音楽が取り込まれました。
他にも、僕らはコーヒーを飲みたいと思ったら、コンビニにいってドリップコーヒーを安価に飲むことができますが、今までそれと同じ値段で買っていたコーヒーは缶コーヒーでしたよね。
こんなふうに、新たなアイデアは、二つの情報を結び付けて生まれてきます。
ということは、僕らのアイデアはどれだけ「一般情報」をかき集められるか?ということにもなってきます。

困ったことに、「一般情報」は「特殊情報」に比べれば無限に存在します。だから、「一般情報」は今まで僕らが学んできた、体験してきた情報、つまり、「既存の知識」ということになります。
と、いうことは…
僕らはこれからの時代を生き抜くためには、常に様々な情報を吸収してならないようです。

2.情報を咀嚼する

咀嚼とは、飲み込みやすいように噛み砕くこと。つまり、かき集めた情報を目を通して理解していく作業です。
情報を集めた段階では、僕らはそれに大して「知っている」だけです。理解までは至っていません。
僕らは「知っている」ことを「理解している」と勘違いする生き物です。だから、集めた情報をそのままにしないで、一つ一つ目を通して情報を丁寧に噛み砕きましょう。
自分が理解できているかどうかをチェックするには、それについて誰かにちゃんと説明できるかどうか?と自分に問いかけてみれば理解できているかどうかすぐに判断できます。

さて、情報を一つ一つ咀嚼していると、第3ステップの兆しがちらほらと見えてきます。

3.情報の組み合わせを試行錯誤する

あれこれ情報を吸収していると、集めた情報の関連性が見えてきます。
その関連性は、集めた情報には載っていない情報ですので、忘れないように書き留めておきましょう。それが、新たな閃きを生み出す鍵になることもあり得ます。

そんなふうに、他の情報と組み合わせて、さらに情報の関連性を生み出しましょう。
ここからは頭の中で試行錯誤の連続です。情報をあっちに向けたりこっちに向けたりと、とにかく試行錯誤です。

そうやっているうちに、もしかしたら閃きが生まれるかもしれませんが、大抵の場合ネタ切れになってうんざりしてきます。
しかし、そこまでたどり着けば、第3ステップは完了しているようなものです。

4.無意識に任せて閃く

ここから先は、第4ステップである無意識に任せましょう。
無意識に任せる、つまり、放置するのです。
この放置することが、アイデアを生み出すための大事なポイントです。ここがイノベーションの全てが詰まっていると言っても過言ではないでしょう。
なぜなら、閃いてしまえば、あとはそのアイデアを具体的に展開可能かどうかをチェックする作業しか残されていないからです。

閃きの女神が微笑む時

第1ステップから第3ステップまで僕らの脳は情報をとにかくインプットして、アイデアを生み出すためにぐるぐると脳を回転させて努力してきました。
しかし、アイデアという閃きは閃きたい時には生まれないのです。
20世紀最大の社会学者であるマックス・ウェーバの「職業としての学問」の言葉を借りると、

閃きは、閃きが生まれたい時に生まれる。私たちが閃きたい時には生まれないのです。
実際、最高の閃きは、イェーリングが生き生きと描いているように、ソファに座って煙草をふかしている時とか、またヘルムホルツが自然科学車らしく厳密に述べているように、長い坂道を登っている時とかに現れます。
言い換えれば、机に向かって頭を掻き毟っているときや答えを探し求めている時にではなく、いつだって全く思いがけない時に現れていくるもなのです。
だからと言って、机に向かって悶え苦しまない人や、問題を発見する情熱を持ったことのない人には、やはり閃きは現れません。

現代訳 職業としての学問/マックス・ウェーバー P28,29

閃きは僕らの都合には合わせてくれないのです。
しかし、情報をかき集め、咀嚼し、頭を掻き毟りながら情報をあれやこれやと組み合わせる努力をした者に、ある時ふと、閃きの女神が微笑んでくれるのです。
だから、僕らが閃くにはステップ1から3までを愚直に行って、先延ばしした時にふと閃くのです。
だから、やれるだけのことをしたら、そこから離れて別の考えたり、別のことをしましょう。
そうしているうちに、僕らはアイデアを閃ける可能性が広がるのです。

アイデアを閃く3B

ところで、集中していた環境から離れるといえば、アイデアを閃く3つの場所、3Bと呼ばれる場所をご存知でしょうか?
これは、ゲシュタルト心理学という分野を確立したヴォルフガング・ケーラーが提唱した、偉大な発見が生まれる場所の共通点を表した言葉です。
それぞれの頭がBが共通していて、「Bath,Bus,Bed」の3箇所。
つまり、「風呂やトイレ、バスなどの移動中、そして就寝前」のことです。
確かに、何か思いついている時はこの3つのBのどこかにいる時が多いような気がします。

どれも共通して言えることは、アイデアを生み出すために机にかじり付いている時ではないし、リラックスしていたりぼんやりとしている時ですよね。

この、リラックスしていたりぼんやりしている時が重要で、僕らの脳は考え事をしていなくても、無意識下では考え事をしているようです。
この無意識が活躍してた結果、アイデアの閃きを起こしているのが3Bなのでしょう。
せっかくなので、この3Bも日常に取り込めばアイデアの生産性はもっと上がるのではないでしょうか。

5.閃きをブラッシュアップして仕上げる

さて、いよいよ最終ステップです。
机にかじり付いて試行錯誤を続け、掌を返すように放置、先延ばしを経て、閃きとの邂逅を果たした末にたどり着く最終段階。
閃いたアイデアをテーマ、課題に沿って有用性をチェックし、具体的に展開させる段階です。

ここで、閃いたアイデアがあなたの世界を変えるものなのか、それとも、大したことのアイデアだったかが判明する瞬間でもあります。

残念ながら、多くの生まれてくるアイデアは後者です。
閃いた瞬間の興奮は、世界をかえる大発見をしたような気分になりますが、それが使えるかどうかを具体的にチェックすると肩透かしを食らうのが常です。

だからと言って、生まれたアイデアをぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に投げ込んではいけません。
その瞬間は、大したことのないアイデアだったかもしれませんが、忍耐強く向き合うことで、誰かと共有することで新たに花開くこともあります。

最悪のアイデアが最高のアイデアに変わる時

スタンフォード大学の授業でこんな演習があります。

まず、受講者たちをいくつかのグループに別れてもらい、自分たちに関係のある課題を上げてもらい、それを見事に解決する「最高のアイデア」と成果の上がらない「最悪なアイデア」をそれぞれ書き出して提出してもらいます。
提出してもらった二つのアイデアをどうするかというと、まず、「最高のアイデア」そシュレッターにかけてズタズタにして処分します。
そして、残った「最悪のアイデア」をシャッフルして配り直すのです。

時間をかけてひねり出した「最高のアイデア」が目の前でズタズタにされた受講者たちが呆気に取られている中、「最悪のアイデア」を配り直し、受講者たちに次の課題を指示します。それは、
「この最悪のアイデアを練り直して最高のアイデアにしてくだい」

「最悪のアイデア」が、しかも他人のアイデアが回ってきて、「最高のアイデア」に作り直すなんて…
と思うかもしれませんが、受講者たちは手元に回ってきた「最悪のアイデア」を見て「これは使える!!」と閃くのです。

この演習を、スタンフォードのアート・イベントの企画担当者たちにやったところ、次のようなアイデアが生まれました。

「南国でビキニを売る」というアイデアは、「ビキニを着るか、さもなくば死か」というキャッチフレーズで、ダイエットしたい人たちを南国旅行に連れて行く企画を考え、過酷な旅が終わった頃には、ビキニが着られる体型になっている。という企画や、
「心臓発作を起こす美術館を開く」というアイデアは、「健康と薬」をテーマにした美術館を思いついたりしました。

今のあなたにとっては大したことないアイデアかもしれませんが、未来のあなたにとっとは素晴らしいアイデアかもしれないし、誰か赤の他人から見たら素晴らしいアイデアかもしれません。

この演習は、何か問題にぶつかった時、先入観を持たずに、自由な発想で解決策を考えるのにとても役立つ方法だと思います。
一見、馬鹿げていたり、愚かしく思えたりするアイデアにも、少なくとも一粒の実現可能性があることを示してくれるからです。
愛ではには、「良い」か「悪い」かしかないと思いがちですが、そうした思い込みを取り払ってくれます。そして、正しい心構えさえあれば、どんなアイデア、どんな状況にも何がしかの価値があることを示してくれているのです。

20歳のときに知っておきたかったこと/ティナ・シーリングP52,53(第3章 ビキニを着るか、さもなくば死か)

2万分の1のゲルニカ

あなたにとっては箸にも棒にもかからないようなアイデアでも、誰かの目を通せば、素晴らしいアイデアかもしれないのであれば、その可能性を見据えて、アイデアとして形にして残すべきです。
例え、結局誰にも見向きもされないようなアイデアだったとしてもです。

ゲルニカを描き上げたピカソは、生涯に1800以上の絵画、1200以上の彫刻、2800以上の陶芸、そして12000以上のデッサン、タペストリー、版画、ラグなどの作品を制作してきました。

しかし、僕らが知っているピカソの作品は両手の指を使っても事足りる程度でしょう。
かの有名なピカソでさえ2万を超える作品を制作してきたのに、世界から評価されている作品はごくごく一部なのです。
逆に言えば、2万を超える作品を制作したからこそ、悠久の時を超えて評価され続ける作品を世に残すことができたのかもしれません。
そうであれば、僕らがアイデアを胸の奥底に押し込む理由はありません。

今もなお評価され続ける芸術家や発明家の歴史を紐解けば、誰もがたくさんの作品を生み出しています。
エジソンは1093の特許を保有していましたし、モーツァルトは35歳で死去するまでに600曲、ベートーベンは障害で650曲、バッハは1000曲を超える作曲をしています。
しかし、彼らも同様に、広く知られている作品は左右の指で事足りる程度です。

つまり、才能があるかどうかもわからない僕らが、最高のアイデアを生み出すには出し惜しみをしていてはいけないのです。

さぁ、いますぐあなたの頭の中にある有象無象のアイデアのタネを、ノートにでもスマフォのメモ帳にでもなんでも良いから吐き出しましょう。
そして、5つのステップを踏み越えてあなたの閃きを世界に映し出しましょう。

参考書籍

冒頭引用

アイデアを産む5つのステップ

閃きの女神が微笑む時

最悪のアイデアが最高のアイデアに変わる時

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