コロナウィルスという新型感染症が蔓延して、世界は感染症の恐怖を思い出すことになりました。
感染症は人類と切っても切れない関係で、歴史を大きく動かしてきた存在でもあります。
そして、今回も新型コロナウィルスの蔓延で、「ウィズコロナ」という感染症を前提とした生き方へ世界がシフトしつつあります。
つまり、感染症を撲滅する事はできないということでもあります。
実際、人類を恐怖に陥れてきた感染症で撲滅する事ができたのは唯一「天然痘」だけです。
それ以外の感染症はいまだ世界各地、特に、衛生環境や医療環境が整っていない国で起きていますし、そもそも、感染症であるウィルスの進化は人間とは比べ物にならない速さで進化していきます。
人間が感染症への対策を見出しワクチンを広げていっても、ウィルスは自らを進化という過程で作り替えて医療への対策をする。イタチごっこという軍拡競争が現実です。
人類と感染症は長い歴史の中で、軍拡競争を続け、この先もその競争は続くのでしょう。
進化し続けるウィルス
人間がウィルスに対して後手に回ってしまうのは、人類がウィルスの進化に追いつけない事が主な原因です。
ウィルスは、人間と比べ物にならない速度で進化していきます。人間が100万年かけて進化するのに対して、ウィルスはそれを1年やそこらでやってのけると言われています。
この驚異的な進化の速度の理由は、おそらく「感染力と繁殖力のスピード」が主な理由ではないかと思います。
一度感染すれば、一人が二人、三人、四人…と感染させ、免疫力がない人は、ウィルスに侵され感染症を患ってしまいます。そして、同じように一人が複数の人にウィルスを撒き散らし感染させてしまうというねずみ算式に感染していきます。
様々な場所に拡散し、人の体内に侵入したウィルスは、免疫力に耐える事ができれば人間の体の中で繁殖させ、また新たに誰かに感染する。
このプロセスを例えるなら、人間が生まれて、成長し、社会に出てまた子をなし、また成長し、社会に出て…という流れです。
人であれば、数十年かけてこのプロセスを繰り返しますが、ウィルスは数日でやって退けます。
そして、自然淘汰、つまり、環境に適応できない種が滅んでいく。という原理で、人間の免疫力に弱いウィルスは死滅し、強いウィルスが生き残る。そして、それらが人間と比べ物にならないスピードで自然淘汰が繰り返され、結果的に多くの人を感染させるウィルスが蔓延してしまうのです。
さらに、動物から人に感染するウィルスも動物の間を行き来し繁殖と自然淘汰を繰り返すうちに、人間の免疫力に打ち勝つ事ができるウィルスが生まれてしまい、動物由来の感染症、鳥インフレンザや狂犬病などが生まれてしまうのです。
ウィルスに都合の良い現代社会
「3密」という言葉で感染症予防が喚起されるほど、現代社会は濃密な世界です。
そして、それらはウィルスの繁殖に都合の良い世界なのです。
過密化する都市
誰もが生活の中で過密化した場所で多くの時間を過ごしています。
多くの場合は電車という3密を体現した乗り物に乗って、人が蠢く都市に出て、また人が密集した会社や学校で1日の三分の一1を過ごします。
言わずもがなですが、とにかく繁殖することを目的にしたウィルスとっては、至る所に感染先である人間がいるということは、都合が良い事この上ない世界です。
自由な渡航
科学の発展によって、人類はこの地球を縦横無尽に駆け巡る事ができます。
それは、ウィルスにとっても同じ事が言えます。
車や船、飛行機に乗って僕らが世界を駆け巡る事ができるように、ウィルスも人間という乗り物に乗って世界を駆け巡る事ができます。
だから、自国から遠く離れた国で新たなウィルスが発症しても、瞬く間に身近なところへ運び込まれてしまいます。
膨大な家畜
感染症は世界70億の人類だけの話ではなく、野生動物や家畜にも同じ事が言えます。
世界には、10万頭の豚、15万頭の牛、500億羽の鶏がいます。この膨大な数の家畜たちの間で、ウィルスが感染と繁殖を繰り返し、人間にも感染するウィルスが生まれてしまいます。
狭まる自然環境
感染症は野生動物から感染してしまうこともあります。
野生動物を狩って食べる文化もあれば、貧しいがゆえにそれらを食べなければ生きて生きない人々もいます。
その中には、コウモリやサルなど、僕らの常識からは考えられないような動物を食べることもあります。
そして、そこから感染が始まることもあります。
それに加えて、度重なる開発によって自然は狭まり、そこで暮らす野生動物たちは居場所を求めて人間界に彷徨いこみ、今まで触れることのなかったような動物が人間界に新たな感染症を持ち込むこともあります。
閑話休題-ビル・ゲイツのTED Talks
2015年のTED Talksでビル・ゲイツは、人類を恐怖に陥れるのは核戦争ではなく、感染症だ。と語りました。
しかし、人類は感染症対策への準備が万全ではない。だから、それらの備えをしなければならない。と語ります。
具体的には、貧しい国の医療環境を整えること。感染症に対する専門チームを作り、軍と連携し、軍の機動力を活用しいち早く現地に駆けつけるというシステムを構築することです。
感染症と共存する
2020年は長らく人類が忘れていた感染症の恐怖を思い出させる年となりました。
そして、感染症は終わることはない。だから、人類は感染症と共存するという考え方が様々な生活のシーンでのテーマになります。
今まで見てきたように、ウィルスは人類を遥かに凌ぐ速度で進化を繰り返し、様々な動物を介して感染力を強めます。それらを撲滅するには現在の科学力では実質不可能です。
だから、僕らが人類ができることは、感染リスクを減らすことです。
過密化する都市から離れること、感染症のリスクが高い場所や国へ無闇に近づかないこと、家畜の数を減らすこと、自然環境を狭めないこと。が必要になってきます。
おそらく現実的ではないように聞こえますが、今期待されているテクノロジーがさらに発展する事ができれば、少しずつ実現できるのはないかと思います。
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