誰かと親密になるのに一番役に立つのが「何かしら共通のモノ」があること。
例えば、年齢だったり出身、出身校、趣味、立場、性別、外見などなど…
多くの場合はこういった分かりやすかったり、目に見えたりする共通点をもとに相手を理解することで共感して、仲良くなったりします。
しかし、こういった分かりやすい、目に見える共通点は僅かな違いで、互いの間に違和感を生み出してしまいます。
さて、それはナゼなのでしょうか?
「偽物」扱い「モドキ」扱い
例えば、共通の『趣味』や『好きな物』から仲良くなったとしましょう。
最初のうちは、それらの話題で意気投合し始めます。しかし、徐々にそれらに対する、情熱などの『拘り』の度合いの差が見えてきます。
この『拘り』がお互いで大きく違うと、違和感が生まれてきます。
特に『拘り』が強い方から見ると、相手のことを偽物や、モドキに見えてしまいます。
「なんでこんなことも知らないの?」「なんでそこにいってないの?」「なんでこれはやってないの?」などなど…
そしてこれらは『拘り』の強い人から見れば譲ることの出来ない信条のような物で、この信条を軽視した発言や行動をした瞬間、片方は相手を「偽物」や「モドキ」扱いし、もう一方は相手のことを「やりすぎ」と判断してしまいます。
この時、お互いの違和感が、亀裂に変わってしまうのです。
ヴィーガンとベジタリアン
この現象は、実験でも明らかになっています。ヴィーガンとベジタリアンに参加してもらった実験です。
どちらも、大した違いがないように見える人も多いと思いますが、両者は微妙に違います(この微妙な違いが亀裂を生むのですが…)ベジタリアンは肉は食べませんが、牛乳やチーズなど動物性タンパク質は食べます。しかし、ヴィーガンはそれらを徹底的に排除した食生活です。
この2つのグループに自分たちと一般人を比べて評価してもらい、さらにお互いを評価してもらいました。
つまり、ヴィーガンが一般人とベジタリアンを評価し、ベジタリアンも一般人とヴィーガンを評価したのです。
今までの話を見てきたので結果は言わずもがな。
ベジタリアンがヴィーガンを評価した点数より、ヴィーガンがベジタリアンを評価した点数の方が3倍も酷い偏見を持っていました。
つまり、ヴィーガンから見たら、ベジタリアンは「モドキ」に見えるのです。
見えないものを見ようとする
分かりやすい、目に見える共通点は、場合によっては亀裂を生んでしまうのであれば、何を基準にすればいいのでしょうか?
現在の研究でわかっていることは、相手のパーソナリティ、つまり性格や人格が似通っている人が亀裂を生みにくい事がわかっています。
ビッグファイブ
では、どうやって相手のパーソナリティや自分のパーソナリティを見分けるのか?
それについては『ビッグファイブ』という性格分類が最も効果的です。
ビッグファイブは、人々の社会との関わり方を「開放性、誠実性、外交性、協調性、神経症傾向」の5つに分類していて、これらは自分の好みではなく、自分はどういう人間か、どのように生きているかについて問います。
ビッグファイブは下記のような傾向があります。
- 開放性
高い:新しいことを受け入れやすい、知的好奇心が強い、創造的、空想力がある、冒険好き、洞察力がある。
低い:事務的、型どおり、決まったことを繰り返す、懐疑的、理性的、新しいことに臆病。 - 誠実性
高い:規律を好む、効率重視、秩序を重視、責任感がある、自発的、従順、完全主義、管理されやすい。
低い:規範に対して楽観的、伸び伸びしている、そそっかしい、依存傾向 - 外交性
高い:社交的、熱心、積極的、新しい物好き、他人との交流を好む、話好き
低い:一人の時間を好む、恥ずかしがり、控えめ、一人でいると活発になる、物静か、自立している、慎重、冷静 - 協調性
高い:協調的、親切、情が深い、人懐っこい、同情心がある、信頼される、素直、理解力がある
低い:非協調的、敵対的、疑り深い、理解力の欠如 - 神経症傾向
高い:緊張性、気分屋、心配性、傷つきやすい、悲観的、不安症、すぐに欠点を見つける
低い:強気、しっかり者、物事を額面通りに受け取る、感情的な立ち直りが早い
基本的に、ビッグファイブの傾向は全てが高ければいいというわけでも低ければいいというわけでもありません。ただの性格の傾向でしかありません。例外はありますが…。
これらの性格的傾向をもとに相手がどんなビッグファイブを持っているかを考えながら接することで、お互いの関係の満足度は高まります。
ちなみに、この傾向リストを見てもあまり自分のビッグファイブがピンとこない。という方もいると思いますので、自分のビッグファイブを手っ取り早く測る方法も紹介します。
ビッグファイブを測る10の質問
以下の10個の質問に、0(く当てはまらない)~4(完全に当てはまる)の5段階で答えましょう。
- 私は、初めての人に会うのが好きで、会話をするのが好きで、人と会うのを楽しめる人間だ。
- 私は、人に対して思いやりがあり、その思いやりを行動に移し、他人を差別しない人間だ。
- 私は、きっちりと物事をこなし、手際よく行動し、適切に物事を行おうとする人間だ。
- 私は、いつも心配事が多く、不安になりやすく、気分の浮き沈みが多い人間だ。
- 私は、知的な活動が得意で、創造性が高くて好奇心があり、新たなことを探求する人間だ。
- 私は、恥ずかしがり屋で、物静かで、人が多いパーティなどは苦手な人間だ。
- 私は、すぐ思ったことを口にし、冷淡な面があり、他人に同情を感じることはめったにない人間だ。
- 私は、あまり考えずに行動し、さほどきっちりは行動せず、ギリギリまで物事に手を付けない人間だ。
- 私は、たいていリラックスしており、落ち着きがあり、めったに問題について悩まない人間だ。
- 私は、物事を現実的に考え、伝統的な考え方を好み、めったに空想などで時間を浪費しない人間だ。
採点が終わったら、6~10までの5つの質問の点数を逆にしましょう。
つまり、0⇔4、1⇔3とういう風になります。
数字の変換が終わったら、点数を次のように計算します。
- ①+⑥=外向性
- ②+⑦=協調性
- ③+⑧=誠実性
- ④+⑨=神経症傾向
- ⑤+⑩=開放性
そして、合計点が0~4であれば低い傾向、合計点が5~8であれば高い傾向になります。
先ほど書いたように、基本的に、各性格が高ければいい、低ければいいということではないのですが、例外として『神経症傾向』が高い場合は気を付ける必要があります。
神経症傾向が高いことをお互い知らないでいると、互いの行動や考えについて理解することができず亀裂を発生させてしまいます。
神経症傾向について
神経症傾向が高いと、心配症でストレスを感じやすく、批判的で気分屋であることが多いことがあります。これらは、パーソナリティの違いよりもはるかに人間関係にを不幸にしてしまいます。
なぜなら、互いの趣味などの目に見える違いや、性格などの目に見えない違いをよくないこと、つまりネガティブに捉えてしまいます。
やがて、そのネガティブに捉えてしまった違いを批判や軽蔑に変えてしまうのです。
違いは違いでしかない
互いのパーソナリティーが近いと、お互いの関係は良好になりますので近いに越したことはないです。
しかし、パーソナリティの違いは違いとして前向きにとらえる事のほうが重要です。
互いのパーソナリティを把握していれば、良いときも悪いときも様々な場面で相手がどんな反応を示すのかが何となくわかることもあれば、それらの反応に対してパーソナリティが故の反応なんだな。と多少なりとも理解することができます。
だから、自分のパーソナリティを知り、相手のパーソナリティを理解しようとすること。そして、違いは違いでしかないということを理解し、その違いをどうはぐくむかが、目に見える類似性に頼らないで良い人間関係を作るのに重要な要素となります。
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