私たち人間は、時代や国を超えて「先延ばし」という、もはや“業”とも言えるような悩みを抱え続けているのです。
先延ばしする人は早死にする/メンタリストDaiGo P5
生産性を阻む大敵といえば「先延ばし」ですよね。
僕らの人生はこの先延ばしに苦しめられ続けています。
カナダ・カルガリー大学ビジネススクールのピアーズ・スティール教授が40年にわたって、世界中の様々な人にアンケート調査を分析したところ、
実に95%の人が「自分に甘く、仕事や作業で先延ばしをする」事が明らかになりました。
さらに、「慢性化した先延ばし癖が自分の性格的特徴」と考える人は全世界人口の約20%、つまり5人に1人の割合で存在するのです。
誰もが「先延ばし」をしてしまう理由は、僕らの脳にインストールされている思考法が原因になってしまっているのです。
そんな厄介な思考を上手にコントロールす事ができれば、僕らは先延ばしを防ぐ事ができるのです。
それが、WhyとWhat、つまり「なぜ?」と「なに?」の思考です。
How to “Why-What Thinking”
「なぜ」と「なに」の思考にはそれぞれ特徴があります。それらを使い分ける事がWhy-What Thinkingの骨子になります。
やり方は簡単です。
- 『先延ばししてしまっているタスク』や、『やる気が出ないタスク』をピックアップ
- ピックアップしたタスクに「なぜ」の質問をぶつける
- ピックアップしたタスクを完了させるには「なに」をすべきか考える
以上のたった3ステップです。
では詳しくみていきましょう。
「なぜ」の思考は理由を考える
タスクを選んだら「なぜ」の質問をぶつける。とはどういうことかというと、
達成するべき理由を探し出し、モチベーションを上げる目的があります。
先延ばしをしてしまう理由には「達成する意義がわからない」と「具体的になにをするかわからない」という二つの理由があります。
この一つ目の理由「達成する意義がわからない」状態を脱するために、「なぜ」の質問をぶつけるのです。
「なぜ」このタスクを達成するのか?という質問を考える事で、達成した時の意義やメリットに思考が向きます。
そうする事で、「達成する意義」に対する理由付けができ、面倒でやる気が出ない作業も、意義のあるものとして捉える事ができます。
具体的には、
- なぜこのタスクを完了させるのか?
- このタスクを完了したらどんなメリットがあるだろうか?
という質問をぶつけてみましょう
例えば、ついこの前まで本棚の整理を先延ばしにしていました。その時は、
- なぜ本棚の整理をするのか?
→コロナ自粛で買い込んだ本が何十冊と収まりきらずに溢れ出ている。
→去年くらいら一切整理していないから、本の種類がまとまっていない。 - 本棚の整理をしたらどんなメリットがあるだろうか?
→本が綺麗に並んで見た目がすっきりして気分が良くなる。
→前々から探しているのに見つからない本が見つかるかも。
→ジャンルが纏まっていれば、すぐに探したい本が見つけれる。
という感じでリストアップしました。
リストアップができたら、次のステップです。
「なに」の思考はすべきことを考える
残ながら人間はモチベーションだけじゃどうにもならない事ばかりです。先延ばしにされたタスクの数がそれを物語っています。
なので、高めたモチベーションを行動に結びつけるために「なに」の思考を用います。
タスクを完了させるためには「なに」をするか?を考えてリストアップするのです。
「なに」を意識する事で、僕らの脳はタスクに大して集中し、行動力を高める事ができます。
例えば、
- 本棚の中の本を全部出す
- そのために、部屋に広げるスペースを確保する
- 本棚の本を広げたら、既読と未読に分ける
- もう読まない本があったら段ボールにいれる
- 既読本をジャンルごとに分ける
- 仕分けが終わったら本棚に本をしまう
- 読まない本を入れた段ボールをクローゼットに押し込む
こんなふうに、「なに」をするか?を考える事で、次にやるべき事が明確化されて、タスクに集中する事ができます。
ここまでリストアップすれば、先延ばしされたタスクは達成する目的が明確化され、やるべきタスクも明確化された状態になりますので、タスクへの着手が簡単になり先延ばしが防げるようになります。
閑話休題-先延ばしできない人5%の人
中には先延ばしができない人もいますが、割合的にはごくごくわずかです。
『ORIGINALS-誰もが「人と違うこと」ができる時代』や『Give and Take-「与える人」こそ成功する時代』などを上梓した組織心理学者であるアダム・グラント教授は、先延ばしができない性格だそうです。
彼は、期限が近づいた時に感じる焦燥感を数ヶ月も前から感じてしまうせいで、先延ばしをする事が辛くてできないそうです。
試しに、執筆中の中の一つの章を何ヶ月も先延ばししてみたけれど、とても辛かったと語っています。
そんな先延ばしができない性格は子供の時も健在で、新しいテレビゲームを買ってもらったアダム・グランド教授は、クリアの焦燥感に追われ、朝5時に起きてクリアするまでやり込みました。
結果、その姿が地方紙に載ってしまい「任天堂の闇」という見出しを付けられたそうです。
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集中力を司る思考
先述したように、僕らが先延ばしをしてしまう理由は僕らの脳のシステム、つまり思考に原因があります。
僕らは2つの思考を持っています。
それが「本能的思考」と「理性的思考」です。別名「システム1」と「システム2」や「早い思考」と「遅い思考」とも呼ばれていますが本質は一緒です。
この二つの思考にはそれぞれ役割があり、
「本能的思考」は身の危険や何かが手に入る予感をつまり報酬を感じ取るために常に働いていて、いち早く危険や報酬を察知しそれらに対応します。
その際に「本能的思考」は強力な集中力を発揮します。
そして「理性的思考」は物事を丁寧に読み取ったり、複雑な思考、計算などをします。
基本的には「理性的思考」はエネルギーを多く消費するので常時働く事ができないのです。
「理性的思考」が働いていない分、「本能的思考」が働いています。
この「本能的思考」が報酬の予感を察知してくれないから集中力を発揮してくれないのです。
なぜ報酬の予感を察知できないかというと、僕らの目標設定やタスクは具体的ではなく抽象的な設定が多いからです。
「本能的思考」は抽象的なイメージを理解する事が大の苦手です。だから、どんなにモチベーションが上がったり、達成するべき崇高な理由があったとしても、それによって得られる報酬がわからない。
結果、やる気を起こす「本能的思考」が働かずに僕らは先延ばししてしますのです。
だから、「なぜ」の思考だけではなく、「なに」の思考を打つこける事で、「本能的思考」に具体的なタスクを理解させ、タスクを処理し切ったあとの達成によるメリットや達成感を察知させて、つまり「報酬の予感」を察知させてやる気を奮い立たせるのです。
先延ばしのツケは1年で20日
アメリカのインターネットサービス会社AOLとサラリーマンドットコムが1万人以上の労働者に労働週間に関する調査を行ったところ、一般的な労働者は1日8時間労働のうち約2時間、つまり、労働時間の4分の1を先延ばしによって無駄にしているという結果が出ました。
先延ばしする人は早死にする/メンタリストDaiGo P7
1日2時間ということは、1週間で14時間、1ヶ月のうち20日間勤務だとしたら、40時間、一年では480時間
単純計算で1年のうち20日間を僕らは先延ばしによって無駄にしていたのです。
しかし、僕らはもう先延ばしの原因と仕組み、対策をここでしりました。
今まで無駄にしてきたものを嘆いても仕方ありません。
できることは、この先の先延ばしで無駄にしている時間を少しでも縮めることです。
物事を先延ばしにして、やるべきことを積み上げていると、いつしかそれらは崩れ先延ばしの下敷きになり身動きが取れなくなります。
そんな身動きを取れない状態に限ってチャンスが巡ってきたりします。
しかし、先延ばしにしたタスクに身動きが取れなくなり、チャンスを逃してしまいます。そうやって僕らはいくつものチャンスを掴み損ねてきました。
だから、次のチャンスがいつでも現れてもいいように、僕らはやるべきことを早々に片付けて、いつでも準備ができた状態で日々を過ごす事ができれば、僕らは幸運の女神の微笑みに巡り合える事ができるのでしょう。
運命がなにを考えているのかは、誰にもわからないのだし、どういう時に顔を出すのかもわからないのだから、運命が微笑むのは誰だって期待できるのである。」
君主論/ニッコロ・マキャベリ
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