Think

理想を追い求めるナルシストになってませんか?―SNSの悪影響

ナルシストと正式に診断されるのは、人口の4%だと言われています。
では、残りの96%はナルシストではないのか。と安心するのはまだ早いです。
残りの96%は確かにナルシストではないのですが、ナルシストのように振る舞う事があるのです。

特に、誰もが一つや二つとやっているSNSがナルシズムを高めてしまうのです。

SNSがナルシズムを作る

SNSといえばTwitter、Instagram、Facebook…と様々な物がありますが。特にInstagramやFacebookは多くの人が自分の素晴らしい日々をシェアしています。
そんな、自分たちのことばかりシェアする人々はナルシストだろう。だから、ナルシストだからそういったSNSを使うんじゃないのか?と思うかもしれません。
しかし、SNSはナルシズムを高めるという事が実験でわかっています。

マイページを編集するだけで…

まず、被験者を二つのグループにわけ、35分間それぞれインターネットで別んのことをやってもらいます。
片方のグループには、SNSでマイページを編集してもらいました。
そして、もう片方のグループには、Google マップで自分の通学路を辿ってもらいました。
それぞれ、別々の方法で自分自身に関することをインターネットを通して考えてもらったわけですね。

さて、その結果はマイページを編集していたグループの方が遥かに自己陶酔度、つまり、ナルシズムが高まっていたのです。

ナルシズムの弊害

どっぷりとSNSに自分のことを発信し続ける人はあまりいませんが、いつ何時何がきっかけで、自分のことばかり発信し続け、ナルシストに陥るかわかりません。
適度なナルシズムは可愛らしいモノですが、度を越してしまうと周りがうんざりしていることを気にも留めないような、自分のことばかりで共感力が低い人になってしまいます。

どういうわけか、FacebookやInstagramでは暗黙の了解のように誰もが、煌びやかで素晴らしい日々を発信しています。
困ったことに、そんなふうに現実の中の素晴らしい日々を切り取ってSNSに発信し続けることは、素晴らしい日々という理想と現実の間がどんどん開いていってしまいます。
そして、その理想と現実の開きが大きくなるほど、現実から目を背け、もっと素晴らしい日々を追求しようとします。

自分はこんなにも成功していて、こんなにも幸せだ。と周囲にアピールする人ほど、自分が成功をしていなければ、幸せでもないことを知っているのです。
しかし、そんな事実を認めきれずに今日もまた素晴らしい日々を必死になって作り上げるのです。

ナルシストにならない使い方

そんな悲しいナルシストにならないためには、自分の情報を発信することよりも、ためになる情報をシェアする、インフォーマーになること、そして、謙虚さを思い出すことが必要です。

他人にとってためになる情報を発信することは、自分ばかり向いていた注意を周囲に向けることになります。つまり、インフォーマーは自分の話や周囲からどう見られているのかで他者とつながろうとせずに、他人ん情報を提供し楽しませることで、他人とかかわり、つながろうとします。

そして、謙虚さを思い出すことで、素晴らしい人生の中の自分という幻想から離れることができ、現実の自分の不完全さから目をそらさずに向き合うことができます。

シェアと監視

SNSで自分のことを発信することもあれば、友人や知人の近況をSNSから知ることもあります。そして、多くの場合は自分のことを発信するよりも、他人の発信を見ることに多くの時間を費やしています。
つまり、SNSは人によっては自分の近況を発信するよりも、他人を監視するツールになってる事があります。
そして、その監視が間違った価値観を作り出してしまいます。

人生は素晴らしい日々であるべき?

先述したように、どういうわけかSNSには素晴らしい日々ばかりがアップロードされています。
友人たちと楽しげにバーベキューをしている様子だったり、パートナーといった素敵なディナー、自身の社会的活動や仕事への展望がいかに素晴らしいかを伝える長文などなど。パートナーと破局というセンセーショナルな投稿も合ったりしますが、相手との素晴らしい思い出に感謝し前に進んでゆく。といったドラマチックな内容だったりします。現実は悲惨な別れ方だったにもかかわらず….

余談ですが、僕はFacebookもInstagramも昔やっていましたが、今となってはアカウントを削除したので今もそいった内容が投稿されているかわかりませんが、人間の欲求というものはいつまで経っても一緒なので、おそらく大して変わっていないだろう。と思っています。高々10年前の話ですし。

話を戻しますが、多くの場合は素敵な日々を切り取った写真を動画が投稿されています。
そして、どういうわけか、その写真や動画以外の日常は存在しないかのように考えてしまう事があります。
その素晴らしい日々の外側では、自分と同じように悩んだりトラブルがあったりするのにそんなことすら気に留めないまま、自分のパッとしない人生と他人の素晴らしい人生を見比べて惨めな気持ちになってしまいます。

そしてある時「知人や友人たちと同じように、私ももっと素晴らしい人生を歩まないといけないのでは?」と考え、悩み始めてしまいます。

理想の追求と重苦しい義務感

そして、見栄えのいい仕事や見目麗しいパートナー、慈善活動、自分探しの旅など周りにアピールできるようなものを求め始めます。
そんな考えが、人生をゆがめてしまいます。

何もかも平凡な自分を抜け出さなければ。と、理想の追求にばかり目が行ってしまいます。
理想の追求は高い目標のように見えますが、自分の価値観にあったものでなければ重苦しい義務感になってしまいます。
SNSで自分をシェアすることが目的であれば、間違いなく自分の価値観とはあっていないでしょう。

そういった価値観とあっていない理想の追求は、自己実現にはなりません。
自分の興味を押し殺してしまい、自分の可能性に蓋をしてしまいます。
だから、理想を追い求めれば求めるほど、現実から遠ざかってしまい、必要のない義務感にさいなまれてしまいます。

平凡な自分を許すセルフ・コンパッション

SNS上の素晴らしい日々を送る人たちと自分を比べて惨めな気持ちにならないためには、セルフ・コンパッションという、自分に向かって慈悲の気持ちを向ける、平凡な出不完全な自分を受け入れる事です。

SNSによって感じる理想の追求は、人間が生まれ持っている「みんなと同じでいたい」という逃れようのない欲求が生み出しています。
そんな欲求に駆られて、「平凡な日々を抜け出して、素晴らしい日々を送らなければ」という気持ちになってしまいます。
だから、平凡な自分、不完全な自分を受け入れることで、みんなと同じであろうという欲求から抜け出すことができます。

素晴らしい人生は理想の外側にある

SNSは素晴らしいテクノロジーですが、使い方を知らないでいると、ナルシズムを高めたり、価値観とあっていない理想の日々を追い求めてしまい、人生に悪影響が出てしまいます。

それらは、周囲が感じる素晴らしい人生を自分に重ねて演じているだけです。結果、多くの時間とお金をSNSに投稿するだけの為に費やし、似たり寄ったりな理想で様々なものを浪費させているだけになってしまいます。

そして、そんなところには自分が求めている本当の理想はありません。
自分が本当に求めている素晴らしい日々、理想の人生は、FacebookやInstagramの外側にあります。

その外側にある理想の人生にたどり着くためには、自分自身の不完全さを受け入れ、理想の追求をやめることです。
そして、自分の可能性を追求した先に理想の人生が待っています。

参考書籍

関連記事

  1. Think

    失敗したくないなら「佇まい」を見よう

    毎日毎日大なり小なり失敗をしている僕らです。その失敗は、いつまでも覚…

  2. Think

    人生の満足度を高める価値観の見つけ方―科学の知恵で価値観を掘り下げる。

    自分の価値観が明確な人ほど、”人生の満足度や幸福度が高い”ということ…

  3. Think

    価値観を見つけるパーソナルプロジェクト分析—あなたの目標の終着地点は?

    人生において、価値観があると色々といいことがあるから、こんな方法で自…

  4. Think

    先延ばしを防ぐ「Why-What Thinking」

    私たち人間は、時代や国を超えて「先延ばし」という、もはや“業”とも言…

  5. Think

    作業の前に手っ取り早く集中モードに切り替える3つのテクニック

    良い集中は良いパフォーマンスを発揮し、素晴らしい結果へとつながります…

  6. Think

    思考を手放した、反応するだけの人類の未来への妄言

    いつの間にやら僕らの世界はデータに埋もれ、誰もがそれを当たり前の様に…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

最近の記事

カテゴリー

  1. books

    世界史の針が巻き戻るとき、芸術的創造は脳のどこから産まれるのか?、PEAK PE…
  2. books

    科学用語図鑑、Think Clearly
  3. books

    未来のテクノロジーとの付き合い方「ドラえもんを本気でつくる」
  4. books

    つんつんブラザーズ、科学的な適職、コンテナ物語
  5. Think

    脳を育てるのは運動だけ
PAGE TOP