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精神を成長させ、未来を生きる「本を読む本」

本というものはいったん書いて出版されてしまえば、変わることはない。しかし読者の理解を上回る優れた本は、読者になかなか乗り越える事ができないものであり、またそういう本には、読者の能力に応じた読み方というものがある。
したがって、再読によって読みが深まることもあり得るのである。本が読者をそこまで引き上げたと言っても良いだろう。
優れた本には賢くなった読書をさらに向上させるだけのものがあるから、おそらく読者は一生の間に、その本を読むことによって成長していくことになるだろう。

本を読む本/モーティマー・J・アドラー P252(読書と精神の成長)

去年の年末あたりからずーっと読書にモヤモヤしてまして、
本を読んでも読んでもなんだか満たされなくなってたんですよね。
そんな時に友人から勧められた本が本書「本を読む本」
正直、読書術系を読む割には期待してなかったりしていたのですが、半分も読まないうちに大反省しました。

本書を読む前までは、量ばかり気にしてよくも考えずに読んでいましたが、
今では、ペンとノートを御供に一冊の本にかじりついて、あれこれ考えながら読む日々です。
それがとても楽しく感じています。こんなにも理解する事、理解の上で知る事が面白いのか。と。

そんな本書は普段からビジネス書や教養書の類を読む人が、本書を読んで読書術を実践すれば、読書の取り組み方や読書から得ることの価値が上がるだろうと僕は思います。
ですが、正直なところ全ての人に読んでもらいたい作品です。
なぜなら、本書で提示されている読書術を元に、理解すると言う事が、この世界を自由に生きる為の一つの手段になり得るからです。

古典読書術

『本を読む本』は、読むに値する良書を、知的かつ積極的に読むための規則を述べたものであります。全ての本がこの本を奨めるような読み方に値するわけではありません。厳密に申せば、それは名著と言われる本にこそふさわしい読み方であります。そのような名著は、一回だけではなく二回あるいはそれ以上の精読に値するものです。

本を読む本/モーティマー・J・アドラー P4(日本の読者の皆さんへ)

How to Read a Book

巷には、秒で読むとか、一生忘れないだとか様々な謳い文句の読書術が並んでいますが、本書は早く読んで沢山の本を読み、一生忘れないことは目的ではないのです。
本書は、読者に読む技術を与え、今の自分の理解や知識を上回る本に挑戦することで、積極的な読者となり、深い理解を促す。そして、その先にある精神的な成長を目指すことが目的なのです。

本書「本を読む本」の原題は「How to Read a Book」
直訳通り、「本の読み方」を、哲学者であるモーティマー・j・アドラーによって、80年前のアメリカで刊行され、世界中の言葉に翻訳された読書術の古典作品であり、名著です。

教養書から小説、戯曲まで

本書は基本的に教養書を読む上での技術を説いているが、その技術や考え方を踏まえた上で、小説や戯曲、叙情詩などの読み方も載っていたりする。
正直、小説は結構読んできているので、余計なお世話かなぁ。なんて思って読み流してはいたんですが、戯曲や叙情詩の読み方は今まで聞いたことも考えたこともなかったので新鮮でした。

特に、戯曲の読み方が面白くて、そもそも戯曲は舞台で演じられて初めて理解できる。なので、本だけで理解するのは難しい。
だから、舞台作家になったつもりで配役や演じ方を考えながら読む。という読み方が面白い。というか発想が面白い。

結局のところ、何においても本書は、本から教わって知識を得るだけではなく、知識を深く理解する方法が満遍なく語られているのですね。

4つのレベル、4つの読書

読書は手助けを借りない「発見」と同じで、姿の見えない教師から学ぶことだが、そのやり方を知っていなくてはうまくいかない。

P26(読書のレベル)

そんな理解を深める本書の基本的な軸となる読書の技術には4つのレベルがあります。

Level.1 初級読書−「この本は何について書かれた本か」を知る。
Level.2 点兼読書−「この本は、どのように構成され、どんな種類の本か」を把握する。
Level.3 分析読書−「この本が提示する疑問や目的は何か、その答えはなにか」を発見し、理解する。
Level.4 シントピカル読書−1つのテーマに沿って、複数の本を読んで、自ら提示した目的や疑問の答えを自ら発見する。

初級読書は、読む本自体を知ること。
こんなことは誰でもできるだろう。と思うかもしえませんが、もしも目的の本が今の自分の理解を遥かに上回り、読むことが難しすぎたらこのレベルに至れない本もあります。
本自体を知ることができたら、点検読書で目的の本の表紙や裏表紙の要約、本の帯、目次、数ページ読んでみて、本に踏み込んで構成や種類を把握します。
筆者の体験談で構成されているのか、科学的、歴史的な根拠を基に構成されているのかなどなど、その本の目的へのアプローチの仕方を把握します。
そうやって、本の内容の下地を作って次のレベルである分析読書でいよいよ本に向き合い理解する作業に入ります。
分析読書には様々な技術の段階があります、詳しくは割愛しますが、流れとしては、筆者の考え方に折り合いをつけ、提示する命題を理解し、その答えを発見する。そして、その答えを理解した上で本を批判評価する。
そうやって、一冊の本を理解します。

そして、最後のシントピカル読書は研究者のように、自ら仮説や目的を立て、その答えになりうる本を複数読んで、この世界のどこにもない答えを自ら発見する読書です。

さて、なぜ本書は知識を得るだけではなく、深い理解と発見すること、読書によって読者を精神的な成長を促す。ということを重要視するのでしょうか。

情報の海に沈んだ世界で生きるために

いまの私たちは、世界について昔より多くを知る事ができるようになっている。それは恵まれている。深く理解するために、多くを知る事が絶対に必要であるなら、それも結構だろう。
だが、一から十まで知らなくても物事を理解することはできる。情報過多は、むしろ理解の妨げになることさえある。われわれ現代人は、情報の洪水の中でかえって物事の正しい姿が見えなくなってしまっている。

本を読む本/モーティマー・J・アドラー P15(読書技術と積極性)

知的パッケージに反応するだけの人類

この世界は情報に埋もれ、溢れかえっています。
先の引用文で語られているように、僕らは情報の洪水の中で生きています。
「本を読む本」は第二改訂版が世に出たのは約50年前、その時点で情報の洪水はテレビやラジオ、雑誌から始まっていました。
そして、尚も変わらず僕らの世界は情報が勢いを止めることなく流れ込んでいます。

今となってはテレビやラジオだけではなく、その手元にある小さな画面を持った機械が情報の洪水のほとんどを担っています。
さらに、その小さな画面は情報の出口だけではなく、入り口。つまり、誰もが情報を発信する事ができます。
そのお陰で、世界は様々な情報に満ち溢れ情報の質は玉石混合。
しかも、あなたの思考を奪う仕掛けが施された情報(筆者は「知的パッケージ」と呼んでいます)も増えて、当たり前のようにあなたの世界に流れてきています。

この知的パッケージはよくできすぎていて、あなたの判断を下す手間まで省いてくれる。
幸か不幸か、この世界は全く頭を使わなくても何不自由のない世界で、僕らはただただ流れ込む情報に喜怒哀楽の反応をするだけで良いのです。

思考の自由、精神の成長

そんな情報の海に沈んだ世界で生き抜くためには成長する必要があります。
だから本書は深い理解をする為の読書を通して、精神的な成長を目指すのです。
もちろん、ただ反応するだけの生き方に満足しているのであれば、成長は必要ないでしょう。
ですが、そんなブルーライトの光を浴びて生き、反応するだけの植物のような人間の末路は想像したくありません。
だからこそ本書を通して積極な読書に努め、少しづつ少しづつ精神的な成長を続け、情報を理解し判断する事が出来る人間を目指し、反応するだけの人間として張り巡らした根を自ら引き抜いて、情報に埋もれた海の底から這い上がる事が必要だと僕は思います。

今の時代はネット記事や動画媒体で学ぶ事ができる時代ですし、もはやそれが主流になりつつあります。
しかし、学んでいるつもりになっていますが、ほとんどは教わっているだけです。そこには、読者や視聴者の深い理解は生まれてきません。
だからこそ、そんな時代だからこそ本から学ぶのです。

この先の未来、知的パッケージの質はどんどん上がっていくでしょう。そうなってしまえば、反応するだけの麻痺した人類にはどうすることもできないと思います。
きっと、そう言う人類がほとんどになるのかもしれません。恐らくこれは逃れようのない世界だと僕は思います。
だから、そんな世界で自由に生きる事を望む僕は、これからも本からたくさんの事を学び、発見しようとこれからも本を開き続けようと思います。

もしあなたも、反応するだけの人類でいたくないのであれば、「本を読む本」は価値ある一冊になるでしょう。
僕と一緒に、この情報の海に沈み続ける世界を自由に生きませんか。

積極的な読書は、それ自体価値のあるものであり、それが仕事の上の成功につながることもあるだろう。
しかしそれだけのものではない。優れた読書とは、我々を励まし、どこまでも成長させてくれるものなのである。

本を読む本/モーティマー・J・アドラー P255(読書と精神の成長)

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